大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)26号 判決

事実及び理由

一  請求原因のうち、原告主張の実用新案につき、出願から審決の成立、その謄本の送達にいたる特許庁における手続の経緯、その考案の要旨、審決理由の要点に関する事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、右審決の取消事由の有無について考察する。

右に確定した本願考案の要旨及び成立に争いのない甲第二号証(本願明細書)を総合すると、本願考案は天然色画像用カメラにおいて、カメラ暗箱1、撮影レンズ系8、これに応当してシヤツター8′、巻枠7、7(パンクロロール生フイルム3を連続して移動する役目をする。)及び右フイルム3を焦点区帯において正位置を通るよう保定する手段を有し、右暗箱1の撮影レンズ系8の焦点区帯に同レンズ系8を通して入る光線により、右フイルム3(巻枠7、7の操作により、連続して移動する。)上に連続的に三色分解撮影し、右フイルム3上にモザイク状三色分解画像を連続的に形成させるため、三原色モザイクスクリーン2を支持具2′、2′によりカメラ側の右レンズ系8の焦点区帯に支持固定し、右モザイクスクリーン2とは別体たるパンクロロール生フイルム3だけを連続移動させる構造をとるものであることを認めることができるところ、このように、三原色モザイクスクリーンをロールフイルムと別体としてカメラ側に固定する構造が引用例の方法によるカメラの場合と相違し、引用例に開示されない技術思想によるものであること、そして、このような構造をとることにより、三原色モザイクスクリーンとは別体となつている、通常のパンクロロール生フイルムを使用して、天然色画像用三色分解画像を連続して撮影することができるという、引用例から予測しえない実用上の効果を奏することは当事者間に争いがない。したがつて、右審決が引用例の記載は撮影用スクリーンと感光板とをとり枠に一体化して使用するものだけを意味しないと解している点は、事実にそわないといわざるをえない。

そして、右審決が本願考案の出願当時周知であつたとするロールフイルムカメラが本願考案のカメラのように内部にモザイクスクリーンを具えるものでないことは、弁論の全趣旨により明らかである。

してみると、本願考案が、右審決のいうように、引用例の方法に、ロールフイルムカメラの構成を適用することにより、当業技術者の容易に推考することができたものであるということはできず、右審決には、その点の誤つた判断に基いて本願考案を旧実用新案法第一条の実用新案と認めないとした違法があるというべきである。

なお、被告は、本願考案のカメラの構造が感光板としてロールフイルムを採用した点をもつて、引用例に記載された感光板の意味に当時の周知技術を考え併せることにより、当業技術者が容易に推考することができたものであり、引用例記載のモザイクスクリーン法一般において使用される感光板からロールフイルムが除外されるいわれもない旨を主張するが、以上の説示を左右するほどのものとは考えられない。

三  叙上の次第で、本件審決に原告主張の違法のあることを理由に、その取消を求める原告の本訴請求は、正当であるからこれを認容する。

〔編註その一〕本件における請求原因は左のとおりである。

(審決の成立―特許庁における手続の経緯)

一  原告は、名称を「任意に天然色写真を撮影し得る写真機」とする発明について、昭和三十年七月十四日特許出願をし(昭和三〇年特許願第一九、〇七八号)、昭和三十七年三月十日、その一部を分割し、名称を「天然色写真法」として特許出願をし(昭和三七年特許願第一五、一三二号)、次いで昭和四十二年五月八日、その一部を分割し、名称を「天然色画像用撮影機」として、特許出願をし(昭和四二年特許願第二八、六九二号)、更に同年六月三日、旧実用新案法(大正十年法律第九十七号をいう。以下同じ。)第五条の規定により、名称を「天然色画像用撮影機」とする(ただし、後日、「天然色画像用カメラ」と訂正した。)実用新案の登録出願に変更出願をしたが、昭和四十四年三月二十八日拒絶査定を受けたので、同年六月二十七日抗告審判の請求をしたところ、特許庁はこれを同年審判第四、九六二号事件として審理し、同年十二月十九日「本件抗告審判の請求は、成り立たない。」との主文第一項掲記の審決をし、その謄本は、昭和四十五年一月二十四日原告に送達された。

(本願考案の要旨)

二 本願考案の要旨は、次のとおりである。

カメラ暗箱1と撮影レンズ系8と該撮影レンズ系8に応当してシヤツター8′、パンクロロール生フイルム3を連続して移動進行するよう巻枠7・7及び該パンクロロール生フイルムを焦点区帯において正位置を通るよう保定する手段を有し、該カメラの暗箱1の上記レンズ系の焦点区帯に上記レンズ系を通してくる光線により上記パンクロロール生フイルム3上に連続的に三色分解撮影し、該パンクロロール生フイルム上にモザイク状三色分解画像を連続的に形成せしめるよう三原色モザイクスクリーン2を支持具2′・2′により支持固定した天然色画像用カメラの構造(別紙図面参照。本文における数字は右図面における数字に対応する。以下、これに倣う。)。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!